日本国内のsmoke-free environmentsの取り組み

                  日本禁煙推進医師歯科医師連盟会長 大島明


日本国内における職場(一般事業場)における受動喫煙の取り組みは、厚生労働省の5000事業場を対象とした2005年の調査によると(有効回答率45.6%)、喫煙対策に取り組んでいる事業場は88.2%で、このうち 全館禁煙にしているものは20.7%であった。回答率の低さを考慮に入れると全館禁煙としている職場はまだまだ少ないといわざるを得ない。

一方、率先垂範して受動喫煙対策に取り組むべきだとされている学校、役所、病院での取り組みを見ると、学校(2005年文部科学省調査、200541日時点)では、学校敷地内全面禁煙を実施しているものは、小学校(22,490校)で44.4%、中学校(10,899校)で39.1%、高等学校(5,174校)で43.6%であった。役所(職場)(20041月、厚生労働省調査)では、敷地内禁煙あるいは施設内全面禁煙と回答したものは、都道府県庁舎で51.0%、市町村役場で28.0%であった。病院(大阪府の保健所による実施状況調査、2005年度、560施設)では、全面禁煙にしているものは62.7%であった。さらに、大和らの医・歯学部およびその付属病院における敷地内禁煙状況調査(20071月時点)によると、すでに敷地内禁煙にしているものは、医学部29%、同付属病院40%、歯学部16%、同付属病院34%であった。

職場・公共の場所等における取り組みの詳細に関しては、厚生労働省循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業「受動喫煙対策にかかわる社会環境整備についての研究」(主任研究者:大和 浩、産業医科大学産業生態科学研究所)のホームページhttp://www.tobacco-control.jp/をご覧ください。

なお、欧州の30カ国のタバコ規制の取り組みを評価したTobacco Control Scale (Tobacco Control 15:247-253ページ, 2006)に沿って日本におけるたばこ規制対策の現状を客観的に評価してみると、職場や公共の場所における禁煙(@カフェやレフトラン以外の職場、Aカフェやレフトラン、B公共交通機関や公共の場所に分けて採点)では、満点22点のところ日本は20057月時点で3点と極めて低く評価された。20064月から厚生労働省が入っている合同庁舎5号館が全館禁煙となり、さらに20064月のニコチン依存症管理料の施設基準として敷地内禁煙が設けられたため医療機関の敷地内禁煙の取組みが進んだことを受け、2007年1月の評価は3点から4点に格上げされたが、依然として低い評価のままである。

欧州ではFCTC8条(受動喫煙防止の規定)に沿って、国レベルでの取組みが進みつつある European Commission Green Paper on Smoke-Free Europe[2007] http://www.epha.org/a/2543によると、バーやレストランを含めすべての囲われた公共の場所とすべての職場の包括的な禁煙が、アイルランド(20043月)、スコットランド(20063月)で実施され、北アイルランド、イングランド・ウェールズでは20077月に完全禁煙法が施行される。一部例外つきの禁煙法は、イタリア(20051月)、マルタ(20054月)、スウェーデン(20056月)に導入された。この場合、別個の独立した空調の密封された喫煙室の設置が認められている。同様の措置が、フランス〔20072月、接客産業(hospitality section)については20081月まで移行期間〕、フィンランド(20076月)に導入される。リトアニアでは、特別装置を有する葉巻・パイプクラブを例外とする禁煙が20071月に実施される。接客産業を一部例外とするすべての囲われた公共の場所と職場での禁煙は、ベルギー、キプロス、エストニア、フィンランド、オランダ、スロヴェニア、スペインですでに実施されている。

以上から明らかなように、日本の健康増進法第25条は、施設の管理者に対する受動喫煙防止の努力義務規定でしかないのが問題である。受動喫煙防止の内容として屋内100%全面禁煙を明示し、罰則のある、強制力を伴うものに強化する必要がある。



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